教育システム
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2014.12.05

H26年度山田道場WHAT'S GOING ON
『Workshop on Design Thinking for beginners<デザイン思考入門ワークショップ>』

Facilitator; Takanori Kashino, President & CEO of Design Thinking Institute
<柏野尊徳 一 般社団法人 デザイン思考研究所>


2014年11月8日土曜日、大岡山キャンパス南4 号館の423 教室にて、「デザイン思考入門ワークショップ」を行ないました。オープン参加者9名を含めた21名が参加 し、10時から17時までの短時間集中で、身の回りの問題や困難を見極め“現状をよ り良くする”デザイン思考の考え方を実践・体感しました。今回ワークショップをファシリテート頂く柏野氏によるワークショップは3年前から継続しており今回で4 回目になります。因に、「デザイン思考」関連の道場MENU は、今回の柏野氏による ワークショップに加え、米国Stanford Univ.でのInnovation Master Series 研修、デザイン思考を提唱したd.school の講師を招聘してのイベント「d.school comes to Tokyo Tech」、発想力に焦点を当てた「未来洞察」、そして、最終的に、イノベーシ ョンの事業化を実践するLean Launchpad と繋がって行きます。今回のワークショップはその第1歩になります。

今回は「誰でも水素を安全に扱えるようにするにはどうすればいいか?」。燃料電池 自動車に代表される水素エネルギーの普及が話題になっていますが、タイムリーなテーマをもとに、水素エネルギー普及に向けた社会のデザインに取り組みました。

はじめに、水素供給インフラの構築とビジネス環境の整備を目的として設立し関連企業19社を組合員とする水素供給・利用技術研究組合(HySUT)技術本部 池田哲史氏より、水素についての基礎知識と、水素を充填して酸素との化学反応で起こした電気で走る燃料電池自動車(FCV)とともに、水素に関し、一般がイメージしている「爆発」「危険」に関する対策や状況の説明を頂きました。前述の通り「誰でも水素を安 全に扱えるようにするにはどうすればいいか?」へのsolutionを、デザイン思考の提唱する5 steps、即ち、共感(Empathize)・問題定義(Define)・創造(Ideate)・プロトタ イプ(Prototype)・テスト(Test)では、どのように捉えて行くかを体感して行きます。

ワークショップは、5〜6人毎の計4 チームに分かれます。HySut 池田さんと見学に来られた西條美紀先生も1チームを形成し、学生とともにデザイン思考を体感いただきました。

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① 共感(Empathize)
最初に組んだチームとは別のチームの相手とペアになり、リサーチャーとユーザ ーという立場になってインタビューを行います。「水素についての印象や気になっ ていることを教えてください。」と、まずは1回目に互いに漠然としたイメージを聞き出し、2 回目には相手がどんな感情で、なぜそう思うのか、をさらに掘り下げて聞いてみます。得られた意見を整理し、相手がどうしたいと思っている(ニーズ)のか、その人の背景や経験がどう影響してそう感じるのか、抱えている葛藤(インサイト)を推測します。

② 問題定義(Define)
チーム内で、各自のインタビュー相手のニーズやインサイトを発表します。他の人の思いを聞いてまた共感したり、水素についてより詳しい人の意見があったこ とで問題に対して視野が広がったりと、我々作り手だけでは気づけなかった課題が見えてきました。チーム内で最も共感が得られたことや強く解決したいと思っ たことを一つ選んで問題定義としました。

③ 創造(Ideate)
問題定義したテーマに沿って、そのニーズを満たす新しいアイデアを各自自由にイラストで表現します。「こうすればもっと親しみやすくなるんじゃないか」、「これはきっとわくわくするんじゃないか」。ここでは質より量で1 分間に1つを目標に、相手が喜ぶものを想像しながらなるべくたくさんのアイデアを出すことが重要です。出てきた多くの可能性をまたチーム内で共有し、有益で革新性の高い ものの中から一つ絞り込み、チームの提案とすることにしました。

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④ プロトタイプ(Prototype)
紙コップや画用紙、紙粘土などを用いてチームで選んだアイデアを実際に形にし ます。例えば街の模型や製品それ自体など、チームでまとまったアイデアを、簡単に時間をかけずにまずは見える状態に試作します。実際のものつくりにおいても、机上の空論にならないよう早期から手を動かし、ものの使用感を探りながら 開発していくことが、製品を世に生み出すための近道なのです。

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⑤ テスト(Test)
作成したプロトタイプを他のチームの人に体験してもらいます。初期のプロトタイプはさまざまな不備があり、被験者に対して目指す効果や感じ方はなかなか得 られませんでした。3 人の別々の被験者から正直な指摘をもらい、そのたびに改善点は明確に浮かび上がりました。このテストの段階は、霞みつつあったチーム共通の目的を原点に返し、ユーザーの気持ちを直接反映できる非常に有意義なパ ートです。

最後に全員の前でプロトタイプを用い寸劇や解説を交えてプレゼンを行いました。 実際にはこれで完成するわけではなく、何度もプロトタイプは作り直されテストを繰り返すはずです。そのようにして、ユーザーに寄り添いながらアイデアは少しずつ洗練され、新しく進化していくのです。

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以上のような、製品やシステムの提案に対して予測と学習を繰り返すことで、的外れなものから徐々に信頼可能な予測ができるようになる思考法がデザイン思考です。使い手中心の考え方を基本に、試作を繰り返し、多くの失敗を経験して成功案まで絞る このプロセスを、短い時間で圧縮して体験できたことは、今後の研究・開発・チーム 作業の上で必ず活きてくるでしょう。このデザイン発想法を心にとどめて、当初の目標でもある参加者が各々の現場で応用させ、より良い問題解決策を導いてほしいと思います。
 
土曜日にも関わらずご協力いただいた、デザイン思考研究所 柏野さん、HySUT池田さん、ありがとうございました。
 
(文責:下川紘子 AGL4 期生(建築学専攻))