文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
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文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
教育システム
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2016.02.02

H27年度山田道場WHAT'S GOING ON 『The front line of autonomous technology development<自動運転技術開発の最前線>』

Guest Speaker and Facilitator;
Hideyuki Sakamoto, Corporate Senior Vice President, Nissan Motor<坂本秀行、日産自動車(株)取締役・副社長>

 2016年1月22日、すずかけ台キャンパスにて日産自動車(株)取締役・副社長の坂本秀行さんを講師にお招きしました。坂本さんは、これまでにもAGL山田道場でお話いただいており、今回で5回目になります。OPEN参加の学生含め約20名が参加し、活発に質問が飛び交いました。今回の道場では、日産自動車における自動運転実現に向けた技術開発とその課題についてお話しいただきました。

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 現代社会において、自動車には多くの課題があります。その中で日産自動車が解決したいと考えているのは「エネルギー」、「地球温暖化」、「交通事故」、「渋滞」の4つになるそうです。まず、「エネルギー」と「地球温暖化」については、日産は自動車の電動化によって解決に寄与しており、リーフのような電気自動車を発売しています。リーフは排出ガスがなく、二酸化炭素や窒素酸化物を走行中に排出しません。
 次に「交通事故」について、交通事故はその90%以上が運転手に起因するものだそうです。日産は自動車の人工知能化による死亡事故ゼロを目標としています。自動車の運転は認知、判断、操作の順で行われています。人間は運転するとき、周りの状況を目と耳で認識し、得た情報から状況と次にするべき操作を判断し、ハンドル、レバー、ペダルで操作します。人工知能による反応時間は、人間と比較して桁違いの速さを示すため、周りの状況への反応の時間的なロスが少なくなり、事故を回避しやすくなります。実際、オートブレーキ機能の導入により、衝突を回避またはその被害の軽減に成功しています。日産は世界中13ヵ国で29ヵ所の技術開発拠点をもつグローバルな企業であり、シリコンバレーではNASAと連携して人工知能の研究開発を行っています。また、制御に関して多くの世界初の開発を行っており、それらの技術が人工知能の開発に応用されているそうです。今後、人工知能の機能の向上により人為的ミスをカバーし、すべての事故を無くすことが日産自動車の目標です。
 現在、自動運転にはいくつかの課題があり、技術的な課題の一つとしては人工知能が周りを認識する際に必要な処理演算能力が、一般の車道を走るには不足しているということだそうです。高速道路より10倍以上事故が起こりやすいといわれる市街地での自動運転の実現は、事故ゼロのためには必須になります。また、ほかの運転手や歩行者のアイコンタクトのようなサインを推定する機能が人工知能に搭載できていないということも技術的な課題になります。これらの課題を解決するために日産自動車はITソフトやハードウェアを開発する企業との連携を行っています。他にも、事故が起こった際の運転手とメーカーの責任範囲のような法的な課題もあり、法規の整備が必要になります。
 最後に「渋滞」については、プローブデータ(車両の位置や速度の情報)による緩和の促進を目指しています。プローブデータを情報センターに集約し、高精度の交通情報に加工します。その交通情報により、既存のカーナビのものよりスピーディでスムーズなルートの検索が可能になり、渋滞を緩和します。また、この交通情報とインフラ整備によって得る天候や路面状態、信号の位置についての情報を人工知能が利用することで、自動運転の高機能化が可能になります。
 今年、単一車線での渋滞における自動運転機能が搭載された自動車が販売されます。2018年には車線を変える機能が搭載され、高速道路で自動運転が可能になり、2020年には市街地、交差点での自動運転を可能にすることを目標にしています。坂本さんのお話を聞いて、人間が自動車を運転しないことが当然になるSF映画のような社会が、近い未来に到来することが感じられ好奇心が駆り立てられました。
 道場終了後、夕食をご一緒させていただき、学生の質問に丁寧に回答していただきました。お忙しいところ、ありがとうございました。
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(文責:濱野倫弥 知能システム科学専攻・AGL5期生)