文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
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文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
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2015.08.21

H27年度前期山田道場WHAT'S GOING ON 『The Business Development in AGC<AGC旭硝子でのBusiness Development>』

Guest Speaker; Yoshinori Hirai, Senior Executive Officer(Asahi Glass Co. Ltd.)
<旭硝子株式会社 取締役・常務執行役員 経営全般補佐(技術・事業開拓担当)技術本部長 平井 良典氏>

2015年7月31日、今期最後の山田道場レクチャーが行われました。ゲストスピーカーは、旭硝子株式会社 取締役・ 常務執行役 平井良典氏です。旭硝子は、1907年に岩崎俊彌によって創立され、建築用ガラス、自動車用ガラスをはじめ、TVやPC等のディスプレイガラス基板など、様々なガラス事業だけではなく、フッ素系溶剤・樹脂などの化学品事業も展開する、マーケットシェア世界トップのガラスメーカーです。
平井さんは、工学博士(物理工学専攻)を取得し、ご自身の専門とはあまり関係のない分野の民間企業への就職を選択されました。中央研究所で数理スキルを活かし10年以上の研究・開発を経て、ディスプレイ関連を主にした技術マネージメントや新事業開拓の統括・経営業務を担ってこられました。


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今では身近で当たり前にある液晶ディスプレイ(LCD)ですが、1962年にアメリカで液晶ディスプレイが発明され、その数年後、70年代には日本が量産・事業化で80%以上の生産率を占めるようになりました。80年代後半から90年代にかけてラップトップPCやカラー液晶携帯電話の誕生など技術革新が次々起こり、液晶ディスプレイは一気に普及、ディスプレイの主役がブラウン管(CRT)から液晶(LCD)に変化しました。液晶ディスプレイを構成するガラス基板の需要も大幅に増え、ガラスの新たな用途・市場が広がりました。基板のサイズも最初は300[mm]x400[mm]だったものが、現在は3000mm角以上に大型化しています。
これまで平井さんの担う液晶パネルの技術開発は、困難や失敗もあったそうです。後に認められるある技術に数億円以上投じられていたのですが、ディスプレイメーカーの新製品発売のタイミングに間に合わず、一度は量産のタイミングを逸したとのことでした。せっかくの技術を何に応用するか、すぐに別のアイデアを練り直したそうです。携帯電話や自動車運転席のインパネなど、今後の伸びが期待される市場を見据えて応用イメージを作り、数々の特許出願を行ったそうです。その頃から確かに、携帯電話でのインターネット利用、自動車の速度表示はデジタル式に、など、世の中の生活様式が変わっていく兆しがありました。そして、今度は、その新技術は事業化に成功することができました。しかし、実はそれは平井さんがディスプレイの国際学会を通して多分野の市場ニーズを分析し、同時に人脈を拡げて、自動車や携帯電話メーカーとの信頼関係を築き、顧客とともに計画的に開発を進めることができたからです。「良い技術を生めばよい、ではなく、各業界のリーディング企業やエンドユーザーなどと結びつきながら、タイムリーに技術や製品を提供できなければ事業的成功に結びつかない」、というのが教訓として学んだことだと教えてくださいました。

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最近は、韓国勢、台湾勢の猛攻により、言わずもがな日本企業は苦境に立たされています。しかも、液晶ディスプレイ産業の以前に半導体産業でも日本はその中心的ポジションから退いているという歴史もあります。日本が海外メーカーに逆転を許してしまう本当の理由はなんだろうか?と、平井さんは問いかけます。日本人の良心的な性格のせいでしょうか。海外での人間関係の構築力(教養や語学力)でしょうか。どれもが当てはまると思いますが、成熟した社会で我々が当たり前だと思っていることが、別の社会では当たり前ではないということを知るのが大事です。日本のほとんどの人が必要十分の暮らしを確保していて、他の生活者に寄り添った、生活者が渇望するものが頭で想像できなくなっている状態にあるのだと思います。

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平井さんは現在、次世代の新事業推進の責任者でもいらっしゃいます。ご経験から、我々に期待するリーダーシップとして、以下の3点を示してくださいました。
1.人の力を引き出し、使う(ビジョンを示し、やる気を引き出す)、2.人を育てる(場を与え経験させ、責任は自分がとる)、3.異質性・多様性の積極的許容(組織は多様性により自発的活力を持つ)
そして、人を惹きつける人物であること。これはなかなか簡単なことではありませんが、高校時代のエピソードから学生結婚のことまでお話いただいた平井さんのお人柄が、それを教えてくれているようでした。

道場終了後は、夕食もご一緒させて頂きました。平井さんに加え、同社の寺田さんと垂水さんもご一緒いただきました。遅くまでおつきあい頂きました。皆様、お忙しい中、本当にありがとうございました。

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(文責:下川紘子 AGL4 期生(建築学専攻))