文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
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文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
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2017.02.08

H28年度AGL山田道場WHAT'S GOING ON『【Lecture & Discussion/DIVERSITY】Entrepreneurial Management & Innovation<ベンチャー経営とイノベーション>』

Guest Speaker: Akira Kurabayashi, Managing Director, Draper Nexus Ventures <倉林陽、Draper Nexus Ventures>

2017年2月3日(金)。Draper Nexus Ventures(http://www.drapernexus.com/home-jp)Managing Directorの倉林陽さんがAGLに来られました。参加者は、AGL生8名に加え、OPEN学生2名、そしてAGL卒業生の上地さんも参加しました。倉林さんが山田道場に来られるのは今回で4回目だそうです。

今回は大きく三部構成でお話されました。
第一部は倉林さんの経歴と所属されているDraper Nexusについて。第二部はベンチャーキャピタルとは何かということについて。第三部はどんな人が起業しているのか?ということを伺いました。


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【第一部:倉林さんの経歴と所属されているDraper Nexus】
倉林さんは富士通株式会社出身。社会人20年目。ベンチャーキャピタルという業界に関わり始めたのは富士通時代に米系VCに出向したことが始まりだそうです。Draper NexusはソフトウェアやIT系企業を中心にポートフォリオを持つベンチャー・ファンドを運営しています。運用する資金は主に日本の大企業から出資を募り、将来性のあるスタートアップに投資をしています。また、米国シリコンバレーでオープンイノベーションの研修を提供するなどして、出資者(Limited Partner; LP)の社員育成プログラムも提供しています。

【第二部:ベンチャーキャピタルとは何か】
ベンチャーキャピタルは、投資家の出資金を預かり、スタートアップに投資し、その成長リターンを得て、運用します。このようなベンチャーキャピタルは米国では非常に人気の職種だそうで、ハーバードやスタンフォードなどの名の通った大学を卒業した学生は、コンサルティングや投資銀行よりも、いきたいとされる職種だとのことです。そんなベンチャーキャピタルですが、実はAGLに通う学生のように専門領域を持っていることは非常に武器になる面白い業界だと倉林さんは言います。ベンチャーキャピタルに求められるのは、投資先の業務に必要な技術の理解ができるか、投資先事業の拡大のために、業界知見があり、ビジネスの方向性や顧客の紹介、人的資源の紹介等の貢献ができるか、であり、今身につけている知識や経験を発揮し投資先の事業発展に貢献できる方がベンチャーキャピタルの世界においては強いそうです。また、専門領域を持つことにより、投資判断もより正確にできることになるとのことです。このような観点から、マスターあるいはドクターまで出る学生には、潜在性があるので、非常にお勧めできる業界だとのことです。
また、ベンチャーキャピタルの世界で求められるのは、はいかに良い投資先を見つけて投資を行い、その投資先の事業拡大に寄与する価値を提供できるかであり、その成果でしか判断されない業界です。もちろん、年齢は関係ありません。したがって、投資先に価値を提供して成功に導く実力があれば活躍できるそうです。

さらに第二部ではベンチャーキャピタルではどのような考え方で動いているのかをお話いただきました。一般に日本におけるスタートアップは、BtoCの業界が多いそうです。これは日本には若い起業家が多く、そうなると企業向けに何が必要で何を行えば良いのかのイメージを描きにくいためだそうです。それに対してBtoCは、若い人ほどユーザーの求めるサービスが見えやすいとのことです。それに対してアメリカでは、BtoBのスタートアップも多く存在するようです。

また、成功するか否かという観点で見ると明らかにBtoBの方が成功率が高いそうです。これは、FacebookやTwitterのようなコンシューマー向けのサービスで大きくなっている企業のイメージが強い我々からすると意外ですが、これらの一部のコンシューマー向けを除けば、BtoBの方が安定的に成功しているようです。

【第三部:どんな人が起業しているのか?】
アメリカでは投資されるお金は株に対する出資金なので仮に会社が倒産しても起業家には借金としては残りません。これは起業する人にとっては起業というものをリスクと感じさせないという意味で起業を促しているようです。したがって、アメリカにおける起業するか否かの判断軸はお金というよりも、周りと比べた時に起業して戦っていけるのかどうかという点を気にするようです。一方の日本はどうかというと、昔起業する人が資金を調達する先は銀行でした。銀行は貸すときに人に紐づけて担保を取ります。したがって、仮に倒産したならばそのぶんの借金は全て起業した人が負っていたため、リスクであるというイメージがつき、近年まで起業家が少ないという一因になりました。2000年前後に楽天やソフトバンクといった巨大な企業を生む一部の起業家が出ましたが、非常に優秀な天才がうまくいったというイメージで社会を変えるには至りませんでした。そこから5年後、グリーなどのゲームをはじめとする部門で多くの起業家が出てきたことで徐々に雪解けが始まり、現在では多くの起業家が誕生してきています。このようにようやく今、起業家先進国のアメリカに一歩近づいたという現実をお話いただきました。

そんな起業家たちの中でやはりベンチャーキャピタルから見て、魅力的な経営者はその道の経験を積んでいる方のようです。今回、ご紹介いただいた3人の経営者(Sansan/寺田親弘氏、Folio/甲斐真一郎氏、clintal/杉田玲夢氏)は、共にこれまでのキャリアを生かされており、それぞれのもつ知識や業界経験を生かせる分野が、ベンチャーキャピタルから見て非常に魅力的なように思えるようです。第二部にもあったようにここからも、専門的な知識や経験というのは非常に重要で、この知識や経験を生かすことが非常に意味があるということがわかるような気がします。


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ここまでが今回のお話の要約になります。参加した学生の多くがマスターあるいはドクターであり、今回伺ったお話は、現在知り合いに働き始めた友人がいる私たちにとって、専門領域があることが活躍ための武器になるというお話は力になったのではないかと思います。また同時に、自分自身のキャリアを考えるにあたって、大企業中心の考え方が蔓延する中、スタートアップやベンチャーキャピタルといったまた一つ違う視点で考えることに繋がったのではないかと思います。

最後に、お忙しい中、このような機会を提供してくださり、また、道場後も遅くまで食事にお付き合い頂いた、Draper Nexusの倉林さんに、心よりお礼申し上げます。どうもありがとうございました。

文責:岩本卓也(AGL6期生 一橋大学大学院商学研究科)