文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
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文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
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2018.07.24

H30年度山田道場WHAT'S GOING ON 『Workshop/Egaku-an art-based creative development<Egaku-アートによる創造性回復プログラム>』

Facilitators: Kunihiko Yazawa, Artist and White Ship, Inc./Kimi Hasebe
<アーティスト 谷澤邦彦、(株)ホワイトシップ 代表取締役社長・アートプロデューサー 
長谷部貴美> 

7月14日(土)に、株式会社ホワイトシップの谷澤邦彦氏(アーティスト)と長谷部貴美氏(アートプロデューサー・代表取締役)のファシリテーションによるワークショップ、「Egaku−アートによる創造性回復プログラム」を行いました。
山田道場では、新たな価値を開拓し設定するリーダーシップを目指しており、その主要な機能として創造性および論理性を超えた飛躍をあげており、それは筋肉のように鍛えることができるとの趣旨から、今回のワークショップの開催となりました。今回は、いつもと違い、赤坂のホワイトシップのスタジオでの道場となりました。OPEN参加学生14名を含め26名の参加がありました。

*株式会社ホワイトシップ:
今回のファシリテーターをしていただいた谷澤さんと長谷部さんが創業した株式会社ホワイトシップは、谷澤氏のアーティスト活動マネジメントや92スタジオの運営を行うアートマネージメント事業、企業や個人向けEGAKUプログラムの開発と実施を行うラーニング事業、企業等のコミュニケーションデザインを行うコミュケーションデザイン事業を展開しています。谷澤さんのアーティストとしてのフィロソフィーである「EARTHの真ん中にはARTがある」が同社のコーポレートタグラインでもあり、3つのE、つまり、Education, Environment, Entertainment)の領域を、H(Humanity, Hope, Humor)なものに発展させるために、アートを提供していきたい、という願いがこめられているとのことです。ホワイトシップでは、企業や、個人、子どもといったように幅広い層へEGAKUプログラムのワークショップを開催しています。そのプログラムの根本には、人はなぜ描くのか、そしてアートの可能性を追求していくことがあります。そこから絵を「描く」ことで言葉だけでは伝わらなかった思いを表現し伝え、共有し、互いを受容することを目的としています。

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*7月14日のワークショップ内容
まず初めに、鑑賞するということを体験します。ただ鑑賞するだけでなく、自分が感じたことを言葉として表現し各々にポストイットに書き綴ります。同じアートを観ていても、他者が感じたことと、自分が感じたこととは、全く異なる意見がでてくることに、改めて気付かされます。でも、これは、いわば、当たり前で、自分が日々捉われている思考や概念があることに気付かされます。そして、ただ他人の感性と自分の感性や表現力が異なるだけで、何が正しい、間違っているというものは何もないということも、鑑賞を通して、改めて認識しました。

次に、EGAKUプログラムの創作ワークに移ります。今回与えられたテーマは、「自分を突き動かすもの」でした。ワークショップでは、それを即座に絵にしていくのではなく、まずはそれを言語化します。そしてそのあとにその思いを表現するための色を考えてから、創作に移って行きます。創作は、色と形を組み合わせた抽象画のようになります。谷澤さんの指導で、パステルを指でなぞっていく「コスリング」を駆使していきます。約40分ほどで、完成させ、サインを入れ、額に入れて、タイトルをつけます。額に入れると、なかなかいい感じになるのが不思議です。
完成したアートを持って、自分でプレゼンをし、ほかのメンバーから、コメントをもらいます。

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個人的には、創作を通しての学びは3つありました。まず一つは、アートは感性や感覚を中心とした芸術活動だと思っていましたが、そうではなく、感性をもとにそれを言語化し、さらに、自分の感性や感覚に向き合っていくといったように、言語化することが大切であるということです。言語化することによって、自分の感覚をより認識することができます。二つ目に、描くという活動の中で、自分との対話の時間を十分に持つことができ、今まで自分が持っていた考えは本当なのかというような、振り返り、問い直す時間を持てます。私の場合は、色を塗る際にまだらに塗ると汚い、色がきれいに混ざらないなどと創作活動の中でも苛立ちを覚えたりもしましたが、それって本当に汚いのか、誰が汚いと思っているのかというように、自分の無意識の思いと対話する時間がアートによってもたらされました。最後は、自分が描いたものを額縁に入れ、それを作品として他者と話し合うことで、自分だけではなく他者の感覚や思いに寄り添い、密なコミュニケーションの時間を作り出すことができたことです。ここで「密な時間」と言ったのは、何度も自己と対話を繰り返し創造された作品だからこそ、その人の本心や本質が描かれているのだとおもいました。それを言語化し表現することによって、他者に伝え、他者と共有する。その中で生まれてくるコミュニケーションは普段ではできないようなその人自身の内側を見ることができる時間となりました。
「自分を突き動かすもの」は、参加者それぞれまちまちではありましたが、創作の「楽しさ」を垣間見れたような気がします。長谷部さんによれば、この楽しさが「アーティストの感覚」だそうです。

*まとめと感想
アートを通して、正解や正しさを求めるのではなく、自分の本心や内側のビジョンを描き、それを言語化し共有することの必要性は今後私たちが社会に出ても忘れてはならないことだと再認識することができました。また、普段から他人を受容することは必要だとわかっていても、なかなかそれを身につけるのは難しく自分の中の正当性を主張してしまい、相手を否定してしまうことは少なくないため、このようなアートの場を通して他者との対話の機会、密なコミュニケーションをとる機会を日常からもつ必要性を感じました。
最後に、長谷部さんが言っておられましたが、他者と会話することがイノベーションの原点であり、手段を目的化せず本質をみて表現することが、さらに第1歩であることも再認識しました。谷澤さん、長谷部さん、そしてスタッフの皆さん、貴重な時間、ありがとうございました。

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文責:廣島由希 一橋大学大学院社会学研究科 AGL6期生