This is the website of Academy for Global Leadership which ended on March 31st, 2019 due to the end of financial support from MEXT for "Program for Leading Graduate Schools". It has been left here as an archive. Its education program is continuing in Tokyo Tech and all the information is updated on the new page.
Academy for Global Leadership

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2015.11.17

H27年度後期山田道場WHAT'S GOING ON『Design Thinking 1 day Workshop <デザイン思考入門ワークショップ>』

Facilitator; Takanori Kashino and Tamaki Nakamura, Design Thinking Institute<デザイン思考研究所 柏野尊徳氏、中村珠希氏>

11 月14日(土)、デザイン思考研究所の柏野さん、中村さんをファシリテーターとしてお迎えし、「デザイン思考入門ワークショップ」を行いました。柏野さん を招いてのこのワークショップは4年前から継続しており、今年で5回目となります。デザイン思考とは、ユーザの考え方に寄り添うことで人間のニーズを発見 し、新しい解決策を生み出すための方法論のことです[1]。ここで言うデザインとは、必ずしも単に製品の造形のことを指すのではありません。技術やビジネ ス的な要因に加え、ユーザ目線の「こうだったらもっといいのに」を製品やサービスに積極的に取り入れるところに特徴があります。本ワークショップでは、 オープン参加学生を含む14名が5時間でこの方法論のエッセンスを学び、デザイン指向の考え方や、アイデアを形にする一連の流れを体験しました。

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大 学院生ともなると、国際学会に行くときなどに飛行機等で長時間移動することが少なくありません。ここで、例えばスマートフォンの電波を止めなくてはならな い飛行機内において、暇つぶしができなくて苦痛に感じる人も中にはいると思います。今回は、このような例に代表される状況を想定した上で、「長距離移動の 体験を新しくデザインする」ことをテーマとしてユーザの体験改善を図りました。

では、テーマに対して具体的にどのようなアプローチを行え ばよいのでしょうか。そこで用いるのがデザイン思考のプロセスです。このプロセスは、以下の5つのステップの繰り返しから成ります。本ワークショップで は、 1チーム3~4人の4チームに分かれ、時間の制約から①~⑤を一回だけ通して行いました。

① 共感
このステップでは、2人 1組のペアを作り、相手が本当に必要としているものは何かを理解しようとします。今回のテーマで言えば、例えば「長距離移動の際に持ち歩いているものを教 えてください」といった質問に始まり、「それはなぜなのか」などと質問することでユーザのニーズを探ります。そのニーズ、およびそのニーズが出てくる理由 は、インタビュアーが共感(Empathize)できるものである必要があり、また、インタビュアーは共感するために質問を繰り返し、ユーザの体験を掘り 下げていきます。

② 問題定義
ステップ①で得たユーザのニーズを整理し、ユーザとの会話から(ユーザの気持ちから)新しく学んだ ことや、ユーザが自覚していないがそうであろうと推測されること(インサイト)を書き出します。そうすることで、先ほどのインタビューの内容を自分なりに 噛み砕いて理解し、詰まるところユーザはどうして欲しいのかを考えます。今回はこの段階でチームメンバーそれぞれの着眼点を互いに共有し、その中から1つ 選んでチームで解決に当たる課題として設定しました。

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③ 創造
こ こでは、前のステップで定義した、ユーザの本質的な要求を満たすためにどうすればよいか、という問題に対して、その解決策を各自自由にイラストで表現しま した。その後それらの解決案をメンバーで共有して、さらに「こうなったらもっといいんじゃないか」をブレインストーミング方式でアイデア出ししました。最 終的にはこれらの案の中から投票によってひとつのアイデアを選択しました。

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④ プロトタイプ
紙 コップや画用紙、毛糸、模造紙等を用いて、チームの投票で選択したアイデアを簡易的に実現します。実際にテストユーザに使用してもらって、製品に対する ユーザのリアルな反応を見ることが目的です。それゆえ、実際にプログラムなどがされている必要はないですが、ユーザに実際に使っている状況を想像させる程 度の具体性が必要です。

⑤ テスト
プロトタイプをテストユーザに使用してもらいます。これによって、実際にものづくりを始める前 に、反応が悪いものについてはフィードバックをして改善、または、そのアイデアを切り捨てることができるのです。これによって製品化する価値があるのかど うか、いくつものアイデアに対して短期間で検証を重ねることができます。例えば、掃除機の圧倒的なシェアを誇るdysonにおいては、このプロセスを 5,127回も繰り返していたそうです。素早く失敗し、山のような失敗から多くを学習していくことへの重要性を感じます。実際私たちのグループワークにお いても、テストユーザから様々な指摘をもらうことで、作り手であるメンバーだけでは発想し得なかったような問題点、改善点を見つけることができました。

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こ れが、デザイン思考の5つのプロセスです。要約すると、ユーザ目線で問題点、ニーズを洗い出し、それを整理してユーザの抱える本質的な要求を推測し、その 要求を満たすアイデアを出す。そして、出されたアイデアをプロトタイプにすることで早期に形にして、テストユーザに使用してもらうことでまたユーザに寄り 添ってフィードバックをするorアイデア出しに戻るor問題点の洗い出しや要求の推測に戻る、となります。繰り返しになりますが、どこまでもユーザに寄り 添って考えるところにこのプロセスの特徴があります。

今回はこのようなデザイン思考のプロセスを5時間という短時間で集中的に一通り体験でき、参加者のみなさんは非常に有意義な時間を過ごせたのではないかと思います。今回学んだことをこれからの問題解決に活かし、社会に還元していきたいと考えています。

このような機会を提供してくださった、デザイン思考研究所の柏野さん、中村さんに心よりお礼申し上げます。どうもありがとうございました。

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参考文献
[1] Tom Kelley and David Kelley, "Creative Confidence: Unleashing the Creative Potential within Us All," Crown Business, 2013.

(俵京佑 AGL5期生(機械宇宙システム専攻))