2015.05.18
H27年度山田道場WHAT'S GOING ON 『Lean Launchpad-Customer Development Model-2 Presentation of the result of Interview<事業創造実践リーンローンチパッド第2回 仮説検証結果の発表>』
Facilitators;Takashi Tsutsumi/Masato Iino, Learning Entrepreneur Lab.
<ラーニング・アントレプレナーズ・ラボ/堤孝志、飯野将人>
全6回で構成される山田道場の人気メニュー、「Lean Launchpad」。5月1日はその第2回目のワークショップがありました。第1回目の合宿では全5チームが、自分たちのビジネスについて様々なアイデアを発表しました。しかし、それらのアイデアは現在は仮説でしかありません。Lean Launchpadでは、自分たちのビジネスに関する仮説を、少額のコストで顧客のニーズを一歩一歩検証をしながら開発を進めます。そして検証を行うために、実際に自分たちのビジネスがターゲットとする顧客と会い、インタビューを行うというプロセスを踏みます。
今回のワークショップでは、各チームが実際に顧客インタビューした結果を踏まえ、仮説検証の結果を発表しました。約10日間という短い期間にもかかわらず、インタビュー総数は119件!!どのチームも非常にアグレッシブに行動しているようです。また、各チームの発表では白熱した議論が展開され、当日行うはずだった講義を一部省略しなければならないほどの盛り上がりを見せました!!
各チームの発表内容としては、主に以下のものが挙げられます。そしてこれらの内容に基づいて、議論が展開されます。
◽︎ 製品・サービスの概要:Minimum Viable Product (MVP)やビジネスモデル
◽︎ 価値・顧客シート:サービスが顧客に提供する価値や顧客が持つニーズのメカニズム
◽︎ 検証結果シート:顧客インタビューに基づく修正仮説や得られたインサイト
◽︎ アーリーアダプターの概略:インタビューの結果アーリーアダプターと判断したユーザの概略
◽︎ 検証完了か、ピボットかの結論:検証を完了するか、仮説を修正して検証を継続するか
◽︎ 全体を通しての学び:顧客インタビュー等を通じて何を学んだか
チーム「和shock!!」発表の様子
チーム「Mounty」発表の様子
今回のワークショップにおける議論の特徴としては、「アイデアをみんなで出し合う」という方向性はあまり求められていないということが挙げられます。これは、その場でいくらアイデアを出しても結局そのアイデアも単なる一仮説に過ぎず、実際に機能するかどうかは仮説の検証を行わなければ分からないため、あまり建設的ではないからです。それよりも、顧客開発モデルの観点に基づく、より本質的な議論が求められます。たとえば、議論の主な争点としては以下のものがありました。
・ニーズのメカニズムの具体性。ニーズはどれだけ切実なのか?(現状対策の度合い)
・アーリーアダプターの「要望」の共通点ではなく、「属性」の共通点は何なのか?
・ピボットした場合、その根拠はなんなのか?妥当なものか?
・MVPの仕組みの具体性。MVPをどのようにユーザに理解してもらうか?
議論の様子
特に、どのチームにおいても具体性、特に顧客セグメントやJob To Be Done (JTBD)の「絞り込み」がどれだけ行われているかといった側面が言及されたと思います。顧客インタビューでは、ニッチで切実なニーズのメカニズムを見つけることが重要で、そのために、状況を"細かく"深堀する必要があるということです。たとえば、顧客インタビューをしていてありがちなのは、インタビューイから「加えてこういうのがあったら・・・」といったような要望が出てくることです。このような場合は「ではそれを手にいれるためにどうしているのか?」というところを深堀する必要があります。この時に、「放置してます」という回答であれば切実ではないという判断ができますし、「実は頑張っています」という回答であればそれがどれだけ本気かというところをさらに深堀することもできます。このようにして深堀をし細かく見ていくと、当初の仮説とは異なり、実は顧客セグメントごとに異なるJTBDや課題を持っていることなどが浮き彫りになっていきます。深堀をして、最も切実なニーズや属性に絞り込んで検証を進めることで、より製品・サービスの価値をクリアにすることができるでしょう。もしここを曖昧なままにして、様々な顧客の要望に応えようとすると、最終的な製品・サービスが「いいところ取り」をしたものとなってしまい、製品・サービスの価値が曖昧になってしまいかねません。「フランケンシュタインを作ってはいけない」というアドバイスが非常に印象的でした。
議論の中では「アイデアが縮こまりすぎている」という部分にも言及がなされました。せっかく非常に可能性があるところを攻めているのに、アイデアが縮こまっているがためにそのままで終わってしまう可能性があるのは勿体無いので、可能性を追いかけようということです。たとえば、「自分一人が月に100万円もらえるくらいを最低規模として考える」、こういった考え方を一つの視点として取り入れることで、よりビジネスとして成り立つ可能性が高まるのではないかというアドバイスも、自分がアイデアを考えるときにはなかった視点であり、非常に印象的でした。
Lean Launchpadのワークショップは、参加する度に新たな学びがあり驚かされます。ファシリテーターの堤さん、飯野さん、メンターの川瀬さん、須賀さん、辻さん、飛澤さん、貴重なご意見をいただきありがとうございました。
(文責:渡邉亮彦 知能システム科学専攻D2 AGL3期生)