文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
AGL:グローバルリーダー教育院

文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
教育システム
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2015.05.27

H27年度山田道場WHAT'S GOING ON『Governmental role to promote commercialization of technology and leadership on public sector<科学技術からビジネスを>』

Facilitators; Masaru Nagura / Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT)
<文部科学省 科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課/名倉勝>

2015年5月11日の山田道場は、ゲストに、文部科学省 科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課より名倉勝氏をお招きしてのレクチャー&ディスカッションでした。日本の大学で行われる研究開発をいかにして社会で使われる産業技術へと発展させるかという、大学発ベンチャーの創出や産学連携促進について、名倉さんが省庁の立場から行われている日々の挑戦を紹介していただきました。
名倉さんは、東大で博士号取得後、文部科学省に入省されました。グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)の推進者でもあります。EDGEプログラムでは、これからの産業界に新たなイノベーションを起こせる人材を育成するべく、若手研究者や大学院生を擁する選ばれし大学を支援しています。これに関する任務の流れは、政策プログラムを考案し、MEXT内の4~9人程のチームで話し合いを重ね、税金からなる年間9億円(3年間)の予算を組んで財務省から認可を得たのち、大学や企業に呼びかけプロジェクトを実際に動かしていくとのことでした。政策のコンセプトに応じたそれぞれの新しい教育プログラムを提案する多くの大学の応募から支援する大学を選出し、その後もプログラムの成果はどうか、予算の運用が正しく行われているか、膨大な書類や会計管理、イベントの視察など日夜忙しく奮闘されています。

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政府が掲げる科学技術基本計画というものがあります。これは1期につき次の10年程度を見通した科学技術政策をまとめ、前期課題を踏まえて5年おきに策定するもので、2015年は第4期に入っています。EDGEプログラムもその4期事業に含まれます。期毎にその時の国の目指すべき姿や科学技術の成長プランが示されており、大学と産業界が協同一致して研究を実用化・商品化する産学連携の強化を、名倉さんが所属するMEXTが率いているのです。
お話の途中、「政府が科学技術振興のために年間約4兆円(2014年度)を投じている中で、大学や研究機関がそのお金を費やしている研究は、果たして社会に還元されているのか、しかしそれは必ずしも"売れるもの"にならなければいけないのか」、という問いかけがありました。参加した学生達や先生達からは、「世の中からお金をもらっている以上、役に立つ気で取り組むべき」、「宇宙や地学などの基礎研究分野はすぐに実社会で応用されることは難しいが、人々に知的好奇心や夢を与えるためでもある、誰かの心の在り様を変える」、という様々な意見が聞かれました。正解など事後的にしかわからないのだと思います。
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名倉さんの学生時代の研究テーマは核融合工学だったそうです。二重水素と三重水素の核融合により生じるエネルギーを人間が扱えるものになれば社会的メリットは大きいです。なぜならこのエネルギーは放射能廃棄物が少なく安全で、かかる燃料は無尽蔵であるためです。この核融合エネルギーを取り出せる核融合炉の建設は50年以上前から提唱されてきており、「国際熱核融合実験炉"ITER(イーター)"」が現在ようやく、国際プロジェクトとして日本を含めた7極が協同で推進し、フランスに建設中です。名倉さんも当初、この新エネルギーの実用化に貢献するべく研究者になろうと博士課程に進まれました。しかしその当時、研究者として行っていることが中々社会に反映されないジレンマや、研究に熱中しながらも、世の中にリーダーシップを発揮している専門家は少ないと感じていたそうです。国家公務員1種に合格し、技術系の知見を持った省庁の役人として社会に関わっていくことに魅力を感じたとのことでした。
大学や研究機関には国民の税金が多く投入されているにもかかわらず、そこで行われる技術研究が実社会に積極的に応用されるのは一部で、広まることなく収束していくものも多いのが現状です("死の谷"と呼ばれます)。青色LEDや、ミドリムシの栄養効果を食品化した例を手本に、研究が社会に還元され私たちの将来をより便利で豊かにしてくれるベンチャー企業がもっと生まれてほしい、ひいては研究に直接関係しない国民と研究者との相互の理解が深まってほしいというのが願いだそうです。

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名倉さん、今回貴重な機会をいただき、どうもありがとうございました。
(文責:下川紘子 AGL4 期生(建築学専攻))