文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
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文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
教育システム
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2018.03.12

H29年度山田道場WHAT'S GOING ON『d.school comes to Tokyo Tech』, a workshop facilitated by 3 tutors from Stanford Univ./d.school

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2017年10月28-29日の2日間、米国スタンフォード大学Hasso Plattner Institute of Design at Stanford University(通称「d.school」)の講師3名のファシリテーションによるワークショップ「d.school comes to Tokyo Tech 2017」を開催しました。本ワークショップは、2013年から毎年開催しており、今回で4回目となります。参加者は、AGL所属の学生はもちろん、本学に加え東大、一橋大、大阪大、東京外語大、慶應義塾大の一般学生、全部で40名の学生が参加しました。

1. ワークショップ概要:
(1) ファシリテーター:昨年に引き続きスタンフォード大学d.schoolでワークショッップを行なっている下記3名が行いました。
• Thomas Both: Director, Designing for social systems, d.school
• David Janka: Stanford d.school Teaching Faculty
• Scott Witthoft: space designer and d.school faculty

(2) 参加者:応募者約68名から、多様性と英語力を考慮し40名を選抜しました。 40名の「出身大学別」「男女別」「大学院生・学部生別」「日本人学生・海外学生別」「専攻別」の内訳は下記の通りです。
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(3) 使用言語:英語

(4) ワークショップ・テーマ:Redesign the Tokyo Visitor Experience!

「東京は国内、海外から含め毎年数百万人レベルの人々が訪れます。3年後の2020年には東京オリンピックも開催され、東京を訪れる人々がどんな経験をしたいのかを検討することは重要と考えます。今日においても、初めての観光客は有名な場所を訪れたいだろうし、日本文化をより味わいたい人もいるだろうし、学生や研究者は勉学に励みたいだろうし、仕事で成果をあげたい人もいるでしょう。東京への訪問者にとり何が意味あるのでしょうか?新たな体験を作り出す余地はあるのでしょうか?将来、東京を訪れる意味を再考してみてはどうでしょうか?また、東京に住んでいる人は、ホストとしての役割を再考してみてはどうでしょうか?」
(Tokyo is a major travel destination for millions and millions of people every year, both foreign and Japanese. With the 2020 Olympics just a couple years away, the Tokyo visitor experience will be even more relevant and important to consider. Today people may come to the city as tourists hoping to get a taste of the major sights, as explorers seeking to experience Japanese culture deeply, as students or researchers learning and studying, or as employees focused on work assignments and projects. What does it mean to be a Tokyo visitor? Is there an opportunity to create a new type of experience? How might we reconsider what it means to visit Tokyo in the future? How might residents of Tokyo reconsider their role as hosts?)

(5) ワークショップの様子:
a. 第1日目:
i. "Empathy"をInterviewから探る:
2人人組になって、相手の財布の中身を見せ、その理由や意味を説明してもらって、相手の興味や考えを理解する(empathyを探る練習)。
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ii. チーム分けとテーマの理解:
今回のテーマである「Redesign the Tokyo Visitor Experience!」では、海外から東京への渡航者のニーズや思いを掘り起こし、東京での体験を再設計することが目的です。学生は4人1組、10グループに別れて取り組みます。
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iii. フィールドワーク:
自由が丘、代官山、渋谷、大井町など海外からの渡航者がいそうなところに行き、東京での新たな体験について質問をします。初対面の人に、こちらの意図を説明し、協力してもらいますが、かれらの本音を引き出し、empathizeに持っていくのは簡単ではなりません。

iv. 問題点の洗い出しとオポチュニティ・ステートメントの作成:
インタビュー結果をもとに、チーム内でインタビュー結果の解釈・考察を共有し、課題を設定します。何が問題になっているのか、可決できるとどのようになるのかをdiscussionして行きます。
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b. 第2日目:
i. 解決策のアイデア出し:
課題を解決するアイデアをできるだけ多く出します。ここでは、実現性や技術的課題はあまり考慮する必要はありません。できるだけ多く案出し、メンバーの投票によってインパクトのあるアイデアを選び出します。

ii. プロトタイプの開発:
上記で選定した解決策(アイデア)を形にして可視化します。模造紙、ボール紙、モール、割り箸などを使って作って行きます。その解決策を使うシーンで、誰がどのように使い、どのような効果があるのかを中心に考えます。

iii. 検証とブラッシュ・アップ:
試作品(サービス)を他者に試してもらい、思索の評価とフィードバックをもらいます。あらかじめお願いした、学内外の学生や社会人の方にテスターをお願いしました。3-4人の方に試してもらってフィードバックをもらい、そこから、フィードバックを吟味して、プロトタイプの変更を行います。最終的に、修正したもの(サービス)を寸劇スタイルで発表します。参加した他の学生や講師から、疑問点、さらなる改良点とうのコメントをもらいます。
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2. 「デザイン思考」の位置付けと当道場の狙い:
「デザイン思考」は、「イノベーションを生み出す方法論」として紹介されたり、理解されたりしているかもしれません。特に「emphasize - define -ideate - prototype - test」の5 stepsを踏襲することに注目が集まりがちですが、この5 stepsに新規性があるわけではなく、新製品開発や新規市場開拓を行っている方には、意識せずとも行っている、「当たり前」の5 stepsです。

デザイン思考の根幹は、むしろ以下の2つのコンセプトにあり、この2つのコンセプトが、新たな価値をユーザーに提供する「イノベーション」を生み出す人材には欠くことのできないコンセプトという「常識」と考えた方がいいでしょう。尚、この2つとも、実は論理性よりも論理を超えた飛躍が求められ、この飛躍こそが人材の「価値」につながります。

・ Creative Confidence:
「新たなアイデア(解決策)を出せる」という個人のマインドセットの構築
・ User Centric:
ユーザーのニーズの「理由」を抽出し課題を設定する考え方と能力の醸成

前述の5 stepsは、この2つを自分のものにするためのプロセスという位置付けです。
デザイン思考は、賛否両方ありますが、人材教育の考え方の違いと思います。コンセプトを染み込ませることを重視する人にとっては「意味ある」となり、結果を生み出すやり方(ハウ・ツー)を重視する人にとっては「限界がある」ということになるんだと思います。
「新たな価値を生み出すこと」を重視する当道場では、現実に新製品開発や市場開拓を経験したことのない学生がメインですから、上記の2つでは、前者に重きを置いており、その意味では、「デザイン思考」は格好の題材と理解しています。もちろん、新製品開発や市場開拓を経験したことのない社会人はもちろん、新製品開発や市場開拓を経験しいていても、自身の行動を振り返り、考え方を整理するには、適当な題材であることは間違いありません。ただし、教育の対象となる人により、より課題設定や仮説検証を重視したい、または、顧客開拓という具体的なイメージがある場合は、Lean Launchpadのアプローチが、より適切かと思います。

<山田道場で「デザイン思考」を行う理由>
大きく分けて2つあります。
その1: 当道場では、「新たな価値を開拓し、設定する」ために「リーダーシップ」が欠かせないと考えています。前述のデザイン思考の2つのコンセプトであるCreative ConfidenceとUser Centricを体に染み込ませることが「リーダーシップ」への第一歩と考えています。

その2: 論理性を超えた飛躍性を「デザイン思考」は要求します。特に、「empathize」と「ideate」のstepでは、論理性を超えた飛躍が鍵となり、リーダーシップをとる人材の価値につながります。これは、同時に前述の2つのコンセプトである"Creative Confidence"と"User Centric"の重要な機能とも言えます。「閃き」というと大げさかもしれませんが、「ah」体験には、多少の慣れやコツがあると思いますので、それを体感して欲しいと思います。

「新たな価値を開拓し設定する」ための要素は、「課題設定」「発想」「仮説検証」の繰り返しと考えます。「デザイン思考」は、その第一歩と捉えており、やり方は、対象となるテーマやその人の得手不得手、時間軸など状況により対応できるのが理想的です。また、ファシリテーターによって、重点項目も変わって来ます。当道場では、そのため、「d.school comes to Tokyo Tech」以外にも、「デザイン思考」を扱うワークショップ、マクロ的アプローチによる「政策立案シミュレーション」、web開発をツールにする「Programming Boot Camp」、スキャニングと強制発想という手法をとる「未来洞察」、そして、それらの要素を使いこなし、課題設定と仮説検証をメインとする「Lean Launchpad」と、揃えており、学生が、自分に合ったやり方を見つけやすくしています。

3. Standord Univ./d.schoolからtutorsを招聘する理由:
本ワークショップの主な狙いは、前述のその1とその2にありますが、あえて、スタンフォード大学d.schoolの講師を招聘して行っている理由があります。

(1) 学生に本物に触れさせたい。いわば「デザイン思考」の総本山とも言うべきスタンフォード大学d.schoolでワークショップを運営している講師から、Creative ConfidenceというマインドセットとUser Centricという考え方と能力を学生に植え付けたい。
(2) 米国スタンフォード大学d.school流の、リラックスした雰囲気ながらも、スピーディで、受講者の裁量で結果を出さざるを得ない切迫感を同時に体感させたい。
(3) 英語という環境の中で、あまり面識がなく国籍や専攻など多様なバックグラウンドを持ち、且つ優秀で意識の高い学生との協働作業の楽しさを体感させたい。
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4. 参加者のコメント:

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5. 今後について:
"d.school comes to Tokyo Tech"は、d.schoolのtutorsが国内の大学で行う唯一のworkshopです。来年度も開催予定ですので、未体験の方は、是非参加してほしいです。また、同時に、過去体験した方でも、再度挑戦してもらって構いません。グローバルスタンダードのワークショップに、是非参加してもらいたいと思います。
また、ここで出てきたアイデアを「事業」という形に近づけたい、または、デザイン思考で培ったマインドセットと考え方を、「事業」という実践で試したいという方には、「リーン・ローンチパッド」というワークショップを用意していますので、そちらにも参加してください。

(グローバルリーダー教育院 特任教授 山田圭介)