文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
AGL:グローバルリーダー教育院

文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
教育システム
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2015.08.05

H27年度前期山田道場WHAT'S GOING ON『学生企画・特別OPEN道場:プログラミング勉強会/ Dojo planned/facilitated by AGL Students/Hitoshi Yoshiki; Studying Programing/CODE10,000』

Reported by; 吉木均 (AGL4期生、メカノマイクロ工学専攻)
Hitoshi Yoshiki (2013 AGL student; Mechano-Micro Engineering Dept. )

概要

2015年7月28日(火)~8月3日(月)の7日間、大岡山キャンパス南6号館で、道場特別企画「1週間10,000行プログラミング特訓」を行ないました。 自身の研究活動の幅を広げる、あるいは能率を高めることを主眼において、素早くアイデアをアプリケーションとして形にする能力を養うこと、 そしてソフトウェア開発の全体像を概観することを目的として、普段プログラミングを専門としない学生が1週間朝9時~夜9時まで徹底的にプログラミングに取り組みました。 参加者は下記7名で、うち2名は7日間全日程をやり切ました。

吉木均(AGL3期生)、岡本明大(AGL3期生)、大内遙河(AGL2期生)、川﨑博之(AG2期生)、吉野紘子(AGL4期生)、幸寺健悟(オープン参加/学部4年)、坂井悠里(筑波大)

さらに、開発途中の7月30日には、山田道場のゲストスピーカーとしてもいらした藤川真一氏(http://f-shin.net/fsgarage/)がCTOをされている BASE.Inc(https://thebase.in)を訪問し、各自の実装作業の具体的なアドバイスに加え、IT産業の趨勢や様々なサービスの開発背景について 全般的な講義をしていただきました。出席した2名は、具体的なプログラミングに関する御指導だけでなく、ソフトウェア開発全体に関する議論をさせて頂き、俯瞰的な知見を得ることができました。

開催のきっかけ

そもそものきっかけは、私が次の9月から6ヶ月間、インターンシップで医療・福祉に関する新規事業・システム開発に 携わることが決定したことです。6ヶ月間に新たな医療・療福祉システムを開発するためには、短期間に医療・福祉サービスの顧客および 提供者からフィードバックを集め、素早く改良することが求められます。

これまでの道場教育・グループワークを通し、新たな事業・サービスを生み出すことを体験的に学んできていますが、その過程では アイデアを素早く形にする能力が不足していることを痛感していました。 ごく初期の段階では机上の議論や簡単なモックアップでも十分にアイデアを検証できますが、より深い洞察を得るためには アイデアを対象者に実感を与えることができるような具体的な形にすることが求められていると考えています。

素晴らしいビジョンやアイデアは、ビジネスプランコンテストやハッカソンのような場所に限らず、日々生まれています。 それらを具現化して世に問う能力は、グローバルリーダーの重要な素養だと考え、この特訓を開催しました。

「1日1000行以上、7日で1万行以上書く。7日間×12時間集中でやりきる」

 1日2日プログラミングをかじっただけでは「アイデアを具現化する」ことはできません。本気で実力をつけるためにも、  上記の制約を標榜し、自分と参加頂いた皆さんに課しました。少し要求が厳しすぎたかとも思いますが、実際にやってみた所感としては7日間で 身についたのは「何ができて何ができないか、どれくらいのことが何日間でできるのか、見通しを立てられるための基礎的素養」程度でした。 当たり前のことですが、一朝一夕で簡単に身につくものではないことを改めて感じました。まだまだ思い通りにスムーズな開発はできません。

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ただ、アイデアを具現化する見通しは立てられるようになりました。「1週間あれば、大概の動くものが作れる」という自信が身につきました。

藤川 真一氏からの学び

7月30日、昨年山田道場のゲストスピーカーとしてお越し頂いた藤川真一氏(http://f-shin.net/fsgarage/)がCTOをされている BASE.Inc(https://thebase.in)を訪問し、各自の実装作業の具体的なアドバイスに加え、IT産業の趨勢や様々なサービスの開発背景について 全般的な講義をしていただきました。出席した2名は、具体的なプログラミングに関するアドバイスだけでなく、ソフトウェア開発全体に関する議論をさせて頂き、俯瞰的な知見を得ることができました。

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開発に対するアドバイスでは、いろいろと考えてしまって開発が進まなくなる初学者が陥りそうな開発の落とし穴に対して、まずはコアの機能を作り、 そこから拡張していくとき次に何が必要なのか考えていくことが大事であるといった各自の状況に合わせたアドバイスや、 それぞれの進捗情報にあわせた今後の開発の方向性のアドバイスをいただきました。また、基本的なブラウザ・サーバー・データベースといった構成に 基づく思考プロセスや、セキュリティの問題など、幅広い知識を学ぶことができました。 具体例を交えた普段生活で使っていながらも知らない部分を知る貴重な機会となりました。

特に印象に残っているのは、IT製品は変化が激しいことから製品リリース後にサービスを継続することそのものが困難であるという点、 メンテナンスだけでも日々常に新たな問題に直面するという点、開発を進めていく過程で自社の成長と製品の限界を考える必要があるため、 常に俯瞰的な視野が求められる、といった点です。 自分自身の立ち位置と急速に進歩する技術を俯瞰視し、必要な新しい技術を学び続けていく藤川氏の姿勢は、私達の模範となる姿勢かと思います。

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プログラミング学習のすすめ

皆さんには是非1度はこのくらい集中的に取り組むことを強く勧めたいとも思います。私たちは今、WordやExcel、Powerpointを難なく使いこなしています。 使いこなせていない方を見る時、ちょっとしたトラブルに対応できてい方をサポートするとき、どのように感じるでしょうか。「この程度のことなのに、できないなんてもったいない」と思いませんか。 今、私たちの次の世代は(そして恐らく同世代の一部ですら)プログラミング「程度のこと」と思っているはずです。ソフトウェアエンジニアになることはなくても、何らかの課題に直面した時に、強力な解決策になることは皆さん御承知のはずです。

学習してみて驚いたのは、多くのサンプルデータやデモで、最先端の学術研究が取り扱われていることです。ロボットモーションや生命科学、経済シミュレーションや環境政策、様々な分野への応用を想定して設計され、既に適用されている点です。「もうすでにこの程度は当たり前。コピペで出来てしまうのだ」と衝撃を受けました。

上手い下手はさておき、あらゆる場面・産業で求められる一種のリテラシーです。先送りにせずに学ぶことは重要だと、やってみて改めて痛感しました。

成果紹介

私の1週間での学びを簡単にまとめると、以下のとおりになります。

Before

HTMLとCSSが多少できる。研究ではC, C++, Matlabを使用している。素早く「動くUI」を作ること、DBを作ることが課題。

After

  • Javascriptプラグインとテンプレートを活用し、PC・スマートフォン対応のUI画面を作成・編集できる。
  • RDB(リレーショナル・データベース)を理解し、自らリレーションを定義したDBを実装できる。
  • ローカルサーバ環境をWindowsに構築し、Ruby on Railsでアプリケーション開発ができる。
  • UI・サーバー・DBと、フロント~バックエンドまでのデータ処理を俯瞰し、必要な処理を考える素養が身についた。

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まだまだ初歩ではありますが、この7日間で目標のアイデアを形にする能力、全体を俯瞰する能力がつき始めたのを実感しています

また、7日間やりきった岡本くんの作品も紹介させて頂きます。岡本くんもRuby on Railsを学習し、特にUI開発の学習に注力していました。 それぞれが注力すべき部分を深く学習し、周辺領域についても学習できていることがわかるかと思います。

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謝辞

本特訓の質を高め俯瞰力を養うための貴重な機会をくださった藤川様、大変ありがとうございました。また期間中作業スペースをご提供くださった 山田先生、事務室の方々、ご協力ありがとうございました。

(吉木均、AGL3期生、メカノマイクロ工学専攻)