文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
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文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
教育システム
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2016.01.11

H27年度後期山田道場WHAT'S GOING ON『Progress and innovation in the fields of IoT, Big Data, Artificial Intelligence (AI) and future society<IoT、ビッグデータ、人工知能の発達と未来社会について >』

Guest Speaker and Facilitator;
Daisuke Takehara, Producer, Media Lab., The Asahi Shinbun Company
<朝日新聞社メディアラボ・プロデューサー・竹原大祐>

 12月21日、大岡山キャンパスにて株式会社朝日新聞社メディアラボプロデューサー竹原大祐さんをお招きしての道場が開催されました。竹原さんは、昨年度に引き続きの登壇です。

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 今回の、道場は「IoT、ビッグデータ、人工知能の発達と未来社会について」と題し、現在の朝日新聞社メディアラボ内での取組みの紹介や、未来への展望についての講義を頂きました。また、課題として出されていたIoTや人口知能の活用した未来のサービスについて各参加道場生がその案を発表することも行われ、竹原さん、道場生同士で活発な意見交換が行われました。
 まず、竹原さんからは現在進行形で起こっているIoTとそれに深く関るウェアラブル端末の可能性について、直近開催されたウェアラブル・テックの様子を紹介して頂きました。竹原さん曰く、日本には約45億個のセンサーがあり、これは全世界のセンサー数の約25%にも匹敵するものであり、日本はセンサー大国といえるそうです。しかし、日本人はまだまだそういった情報に対して価値をあまり見出していない現状にあるということを語っていらっしゃいました。その例として、日本人の気質として大いに気にする情報といえば天気ではないか、というお話をされたとき、参加道場生の多くがうなずいていました。また、ウェアラブル端末についてまだまだ馴染みは薄いが、2020年には全世界で210兆円もの市場になる可能性があるそうです。そして直近のウェアラブル端末の代表例として、アップルウォッチの現物を見せて頂きました。
 次に、AIや人工知能の現状の紹介がなされました。ここでは、ソフトバンクが発売をしたペッパーを使った朝日新聞の取組みや、人工知能の開発事例、そして今後のビジネスとの関わりについてお話頂きました。ペッパーを用いたイベントとして、朝日新聞ではペッパーを編集長とした編集会議を行うイベントの開催を行ったそうです。また、新聞記事をベタ読みするだけでなく、新聞記事からキーワードを拾ってきて人間と疑似的な会話を行わせようとするコンセプトモデルを、ペッパーを使った動画で見せて頂きました。ここでは、ペッパーが「人の形をしたiPad」であるという視点や、ペッパーの可能性として「人は会話を聞いてもらいたいが、提案はしてもらいたくない」という分析が非常に興味深かったです。

 人工知能の開発の現状について2例ご紹介頂きました。一つはブロック崩しに関する機械学習の動画でした。最初は、全くボールの軌道を追えていなかったAIが、最後には見事にボールに反応し効率良くブロックを崩していく様子には本当にAIは人間以上になりうるかもしれないという脅威すら感じました。また、日立が開発を行っている人口知能ではこれまでの蓄積されたニュース記事のデータベースを基に、特定のテーマについての賛成・反対の筋立てを行ってしまうというものでした。最後にAIや人口知能の今後のビジネスとの関連について、トヨタが本場シリコンバレーに10億ドルの資金を投下して人口知能に関する研究所の設立を紹介頂きました。これは、Googleの自動運転自動車の対抗とも言えそうです。既存のハードとAIの融合を目指した激しい競争が今後展開されていくことが期待されます。

 現状のIoTやAI、人口知能についてのお話を頂いた後は、今回の道場のメインである各道場生が考えてきたIoTや人口知能を用いたサービスの発表が行われました。「通貨自体にセンサーを埋め込み、貨幣流通のフローを可視化する」、「体の中から体の機能をセンシングする」、「あらゆるモノにカメラが埋め込まれ、文字通りこれまでになかった視点から物事が見られるようになる」など、各道場生それぞれが独創的な視点から発表を行いました。竹原さんからは、是非このアイディアを今回の発表で終わらせるだけでなく起業などにより形にしてもらいたいと熱い言葉を頂きました。

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 今後の未来への展望について、まず直近のオックスフォード大学が発表した将来機械に取って代わられる仕事の研究を紹介頂き、どこまでAI、人口知能によって置き換わるのか、また人口知能は人間にとっての脅威となりうるのかなどの論点が示されました。

 発展したテクノロジーを使った社会課題解決の可能性についてもご提示頂きました。大阪・中崎町で開かれているイベント「ロボ×まちハッカソン」があり、少子高齢化問題が浮き彫りになっているそうです。現在、朝日新聞社がソリューション型ジャーナリズムという観点で取組みを進めている事例において、竹原さんは人口減少・少子高齢化を迎える日本の様々な社会課題(防災・防犯・見守りなど)に対してIoTやAI・人口知能の可能性を探っていくべきだ、と思っておられるそうです。ここで語られたソリューションという視点を入れた新たなジャーナリズムの形のお話が大変興味深かったです。そして、そこにどのようにこれらのテクノロジーが活かされていくのか、今後の動向に注目していきたいです。

 最後に変容する未来の中でどのように人が生きていいけるとハッピーなのかという観点について、竹原さんがプロジェクトを進めていく時の経験を踏まえて3つの視点を提示頂きました。

 1. 希少価値を生み出すこと
 2. それらを組み合わせて価値創造を行うこと
 3. その価値を伝え、お渡しすること

 具体例として、直近最新作が公開されたスターウォーズシリーズの産みの親であるジョージ・ルーカスは正にこの1と2に長けた人間であるそうです。また、竹原さんが所属される朝日新聞社は記者網で1と2をカバーし、全国各地の販売店により3を行っており、まさに3こそが朝日新聞社の強みでもあると仰っていました。

 予定していた時間を大きく超過しながらも、我々の考えてきたアイディアに対して一つ一つ丁寧にコメントを頂くとともに、今後のIoT、人口知能、AIの可能性について魅力ある講義を頂きました。竹原先生、ありがとうございました。

(レポート:神原崇之 AGL5期生 M1一橋大学大学院 応用経済専攻)