文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
AGL:グローバルリーダー教育院

文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
教育システム
道場 Activity 道場 Activity

2017.08.21

H29年度山田道場WHAT'S GOING ON『Revolution of Display/Leadership AGC is pursuing<ディスプレイの変化とAGCの求めるリーダーシップ>』

Guest Speaker: Dr. Yoshinori Hirai, Managing Director and Executive Officer, Asahi Glass Corporation<旭硝子株式会社 取締役・常務執行役員 平井良典>

2017年7月28日、山田道場のゲストスピーカーは、旭硝子株式会社 取締役・常務執行役 平井良典さんである。平井さんは、AGL初年度(2011年)から、毎年道場に来ていただいており、今回、平井さんに加え、杉本執行役員、寺田さん、そして垂水さんと、同社から4名の方にお越しいただいた。
旭硝子株式会社は、ロンドン大学で応用化学を修めた岩崎俊彌によって1907年に創立された。日本社会の発展とともに時代に適応した新事業を展開し、海外展開も1950年代のインドにおけるガラス事業を筆頭に広がりをみせた。現在では、ガラス・電子・化学品・セラミックスの4つの事業領域でグローバルに事業活動を展開している。今回の講演テーマは、日本の産業競争力を高めるために必要な能力とAGCの期待するリーダーシップについてであった。
平井さんは、学者になることを志し、工学博士(物理工学専攻)を取得した。しかし、学者の道ではなく、ご自身の専門とは関係のない分野の民間企業(旭硝子株式会社)を選択する。博士後期課程2年時に自身の人生について思考し、やりたいことがビジネスの世界にあると感じためである。その選択基準は下記4点だったとのこと。
(1) ある事業で世界トップ(クラス)
(2) 安定した本業を持ち、強い財務体質
(3) 自分の専門とあまり関係ない事業分野
(4) 新規分野への進出に意欲的

P7281090Hirai_Tarumi_L.jpg P7281069Hirai_students_L.jpg

入社後は、研究者として勤務され、関係会社の取締役、そして本社のマネジメントという経緯についてもお話があった。
印象的であったのは、欧米での業務経験についてである。まず海外で博士は、尊敬の念をもって扱われ、人として信用されることを知った。私も博士の価値について日本以外の視点で考えることができた。また当時、新規技術をディスプレイ事業に応用し利益向上に寄与した事例も伺うことができた。実はそこに至るまでに、巨額の投資に対する事業化の失敗という経験もあった。だがその経験があったからこその利益向上という成功があると教えていただいた。平井さんは、新技術を生かした多分野の市場ニーズを分析し、学会を通し人脈を拡げた。大手自動車業界や大手デジタル製品メーカーとの信頼関係を築き、結果として顧客とともに計画的に開発を進めることができたと教えていただいた。つまり、成功した要因は、良い技術と新製品の開発の早い段階からエンドユーザーとコミュニケーションを開始し、そのニーズを取り入れた開発をしたこと、そして市場成長に合わせたタイムリーな価値提供であるという点を共有していただいた。
この欧米の成功事例から、日本の産業競争力を高める人材に必要な能力として、市場成長に応じた新技術の融合によるイノベーションの創出、外部環境(他社との信頼関係、技術)の活用による多様性の積極的な許容であると学んだ。
最後に、私たちがこれからも、人と組織に向き合う際に期待するリーダーシップについて考えを共有していただいた。それは、人の力を引き出し利用すること、人を育てること、そして人と組織においても同じく異質性(多様性)の許容をすることであった。私は組織に属すると、つい同質化してしまうことでイノベーションや主体性を失ってしまうと懸念していた。しかし、そうならないためには、多様性を理解し、他者との違いを明確に認識できれば、無思考で同質化せず主体性を持つことができるのではないかと考えることができ思考を広げることができた。プロジェクト(研究、課外活動)を行う際に、以上の能力とリーダーシップについて、考えて使いこなすことで自身もより価値を最大化できるのではないかとワクワクしながらお話を伺うことができた。大変勉強になりました。
道場終了後は、皆さんで夕食をご一緒した。一人一人が密に、グローバルに活躍している社員の方々と平井さんを交え、お話できたことは貴重な経験であった。お忙しい中、本当にありがとうございました。

P7281095All_L.jpg

(文責:原田憲 物質理工学院 材料系ライフエンジニアリングコース M2, AGL6期生)