文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
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文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
教育システム
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2015.11.17

H27年度後期山田道場WHAT'S GOING ON『Design Thinking 1 day Workshop <デザイン思考入門ワークショップ>』

Facilitator; Takanori Kashino and Tamaki Nakamura, Design Thinking Institute<デザイン思考研究所 柏野尊徳氏、中村珠希氏>

11月14日(土)、デザイン思考研究所の柏野さん、中村さんをファシリテーターとしてお迎えし、「デザイン思考入門ワークショップ」を行いました。柏野さんを招いてのこのワークショップは4年前から継続しており、今年で5回目となります。デザイン思考とは、ユーザの考え方に寄り添うことで人間のニーズを発見し、新しい解決策を生み出すための方法論のことです[1]。ここで言うデザインとは、必ずしも単に製品の造形のことを指すのではありません。技術やビジネス的な要因に加え、ユーザ目線の「こうだったらもっといいのに」を製品やサービスに積極的に取り入れるところに特徴があります。本ワークショップでは、オープン参加学生を含む14名が5時間でこの方法論のエッセンスを学び、デザイン指向の考え方や、アイデアを形にする一連の流れを体験しました。

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大学院生ともなると、国際学会に行くときなどに飛行機等で長時間移動することが少なくありません。ここで、例えばスマートフォンの電波を止めなくてはならない飛行機内において、暇つぶしができなくて苦痛に感じる人も中にはいると思います。今回は、このような例に代表される状況を想定した上で、「長距離移動の体験を新しくデザインする」ことをテーマとしてユーザの体験改善を図りました。

では、テーマに対して具体的にどのようなアプローチを行えばよいのでしょうか。そこで用いるのがデザイン思考のプロセスです。このプロセスは、以下の5つのステップの繰り返しから成ります。本ワークショップでは、 1チーム3~4人の4チームに分かれ、時間の制約から①~⑤を一回だけ通して行いました。

① 共感
このステップでは、2人1組のペアを作り、相手が本当に必要としているものは何かを理解しようとします。今回のテーマで言えば、例えば「長距離移動の際に持ち歩いているものを教えてください」といった質問に始まり、「それはなぜなのか」などと質問することでユーザのニーズを探ります。そのニーズ、およびそのニーズが出てくる理由は、インタビュアーが共感(Empathize)できるものである必要があり、また、インタビュアーは共感するために質問を繰り返し、ユーザの体験を掘り下げていきます。

② 問題定義
ステップ①で得たユーザのニーズを整理し、ユーザとの会話から(ユーザの気持ちから)新しく学んだことや、ユーザが自覚していないがそうであろうと推測されること(インサイト)を書き出します。そうすることで、先ほどのインタビューの内容を自分なりに噛み砕いて理解し、詰まるところユーザはどうして欲しいのかを考えます。今回はこの段階でチームメンバーそれぞれの着眼点を互いに共有し、その中から1つ選んでチームで解決に当たる課題として設定しました。

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③ 創造
ここでは、前のステップで定義した、ユーザの本質的な要求を満たすためにどうすればよいか、という問題に対して、その解決策を各自自由にイラストで表現しました。その後それらの解決案をメンバーで共有して、さらに「こうなったらもっといいんじゃないか」をブレインストーミング方式でアイデア出ししました。最終的にはこれらの案の中から投票によってひとつのアイデアを選択しました。

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④ プロトタイプ
紙コップや画用紙、毛糸、模造紙等を用いて、チームの投票で選択したアイデアを簡易的に実現します。実際にテストユーザに使用してもらって、製品に対するユーザのリアルな反応を見ることが目的です。それゆえ、実際にプログラムなどがされている必要はないですが、ユーザに実際に使っている状況を想像させる程度の具体性が必要です。

⑤ テスト
プロトタイプをテストユーザに使用してもらいます。これによって、実際にものづくりを始める前に、反応が悪いものについてはフィードバックをして改善、または、そのアイデアを切り捨てることができるのです。これによって製品化する価値があるのかどうか、いくつものアイデアに対して短期間で検証を重ねることができます。例えば、掃除機の圧倒的なシェアを誇るdysonにおいては、このプロセスを5,127回も繰り返していたそうです。素早く失敗し、山のような失敗から多くを学習していくことへの重要性を感じます。実際私たちのグループワークにおいても、テストユーザから様々な指摘をもらうことで、作り手であるメンバーだけでは発想し得なかったような問題点、改善点を見つけることができました。

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これが、デザイン思考の5つのプロセスです。要約すると、ユーザ目線で問題点、ニーズを洗い出し、それを整理してユーザの抱える本質的な要求を推測し、その要求を満たすアイデアを出す。そして、出されたアイデアをプロトタイプにすることで早期に形にして、テストユーザに使用してもらうことでまたユーザに寄り添ってフィードバックをするorアイデア出しに戻るor問題点の洗い出しや要求の推測に戻る、となります。繰り返しになりますが、どこまでもユーザに寄り添って考えるところにこのプロセスの特徴があります。

今回はこのようなデザイン思考のプロセスを5時間という短時間で集中的に一通り体験でき、参加者のみなさんは非常に有意義な時間を過ごせたのではないかと思います。今回学んだことをこれからの問題解決に活かし、社会に還元していきたいと考えています。

このような機会を提供してくださった、デザイン思考研究所の柏野さん、中村さんに心よりお礼申し上げます。どうもありがとうございました。

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参考文献
[1] Tom Kelley and David Kelley, "Creative Confidence: Unleashing the Creative Potential within Us All," Crown Business, 2013.

(俵京佑 AGL5期生(機械宇宙システム専攻))