文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
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文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
教育システム
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2018.05.29

H30年度山田道場WHAT'S GOING ON『WORKSHOP/Lean Launchpad -#2 ;<事業創造実践ワークショップ:リーンローンチパッド第2回>

Facilitators;Takashi Tsutsumi/Masato Iino, Learning Entrepreneur Lab.
<ラーニング・アントレプレナーズ・ラボ/堤孝志、飯野将人>

全6回で構成される山田道場の大好評ワークショップである「Lean Launchpad」。5月11日に第2回目のワークショップがありました。第1回目の合宿では全6チームが、自らのビジネスプランについて発表しました。しかしそれらのアイデアは、現在は仮説でしかありません。Lean Launchpadでは、自分たちのビジネスに関する仮説を、少額のコストで顧客のニーズを検証しながら開発を進める手法です。そして検証を行うために、実際に自分たちのビジネスがターゲットとする顧客と会い、インタビュー行いアリーアダプター(切実なニーズを持つ顧客)を見つけるプロセスを踏みます。

今回のワークショップでは、各チームが実際に顧客インタビューした結果を踏まえ、仮説検証の結果を発表しました。約10日間という短い期間にもかかわらず、インタビューを29件行なっているチームもいました。どのチームも非常に積極的にインタビューを行なっていました。また、各チームの発表では白熱した議論が展開されました。各班の進捗報告・議論の後はMinimum Viable Productの作成方法についての講義を行いました。

各チームの発表内容としては、主に以下のものが挙げられます。そしてこれらの内容に基づいて、議論が展開されました。
・表紙(仮想の事業名とロゴ)
・製品・サービスの概要:Minimum Viable Product (MVP)やビジネスモデル
・価値・顧客シート:サービスが顧客に提供する価値や顧客が持つニーズのメカニズム
・検証結果シート:顧客インタビューに基づく修正仮説や得られたインサイト
・アーリーアダプターの概略:インタビューの結果アーリーアダプターと判断したユーザの概略
・検証完了か、ピボットかの結論:検証を完了するか、仮説を修正して検証を継続するか
・全体を通しての学び:顧客インタビュー等を通じて何を学んだか

<チーム「BATH RePUBLIC」発表の様子> <チーム「TUG」発表の様子>
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今回のワークショップにおける議論の特徴としては、「アイデアをみんなで出し合う」という方向性はあまり求められていないということが挙げられます。これは、その場でいくらアイデアを出しても結局そのアイデアも単なる一仮説に過ぎず、実際に機能するかどうかは仮説の検証を行わなければ分からないため、あまり建設的ではないからです。それよりも、顧客開発モデルの観点に基づく、より本質的な議論が求められます。たとえば、議論の主な争点としては以下のものがありました。
・ニーズのメカニズムの具体性。ニーズはどれだけ切実なのか?(現状対策の度合い)
・アーリーアダプターの「要望」の共通点ではなく、「属性」の共通点は何なのか?
・ピボットした場合、その根拠はなんなのか?妥当なものか?
・MVPの仕組みの具体性。MVPをどのようにユーザに理解してもらうか?


<議論の様子>
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どのチームにおいても具体性、特に顧客セグメントやJob To Be Done (JTBD)の「絞り込み」がどれだけ行われているかといった側面が言及されたと思います。顧客インタビューでは、ニッチで切実なニーズのメカニズムを見つけることが重要で、そのために、状況を細かく深堀する、特に「欲しい」「「興味ある」ならその理由、あるいは、「必要ない」「興味がない」ならその理由を論理的に説明する必要があるということです。たとえば、顧客インタビューをしていてありがちなのは、インタビューイから「加えてこういうのがあったら・・・」といったような要望が出てくることです。このような場合は「ではそれを手にいれるためにどうしているのか?」という現状対策を深堀する必要があります。この時に、「何もしていない」という回答であれば、なぜ「何もしていない」のかの理由がわかれば、切実ではないという判断ができますし、「こうしています」という回答であれば、さらにその理由を解明できれば、それがどれだけ本気かというところをさらに深堀することもできます。このようなステップを通し、当初の仮説とは異なり、実は顧客セグメントごとに異なるJTBDや課題を持っていることなどが浮き彫りになっていきます。深堀をして、最も切実なニーズや属性に絞り込んで検証を進めることで、より製品・サービスの価値をクリアにすることができるでしょう。もしここを曖昧なままにして、様々な顧客の要望に応えようとすると、最終的な製品・サービスが、あたかも「いいところ取り」をしているように見えても、結局、製品・サービスの価値が曖昧になってしまいかねません。いかにメインストリームとアーリーアダプターかの判別・特定を行うかがインタビューでの肝になってくると思います。 

議論の後はMinimum Viable Productの作成方法についての講義を行いました。MVPとは「顧客の切実なニーズを過不足なく満たす必要最小限の製品」でニーズを検証するものです。なぜ必要最小限かというと、アーリアダプターが必要としない部分=ムダこそ「リーン」の所以だからです。MVPは切実なニーズの存否を確認しビジネスモデルの有効性を検証するために最も費用効率的な方法であり、仕様が多すぎると仕様のどこが顧客にとって不可欠でどこが余計(ムダ)なのかがわからず仮説検証に有害になります。次のLLP3回目までに、各班どのようなMVPを作ってくるか非常に楽しみです。

ファシリテーターの飯野さん、堤さん、貴重なアドバイスをありがとうございました。

(AGL7期生 一橋大学大学院商研究科MBAコース 矢島亘)