文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
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文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業による支援期間の終了に伴い、平成 30年度3月末に終了となったグローバルリーダー教育院のWEBページです。アーカイブとして残してあります。 グローバルリーダー教育課程は、今後も学内で継続されます。同課程に関する情報は、新 HP に随時アップされますので、(こちら)をご確認ください。
教育システム
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2018.07.19

H30年度山田道場WHAT'S GOING ON『WORKSHOP/Lean Launchpad -#6 ;<事業創造実践ワークショップ:リーンローンチパッド第6回>

Facilitators; Takashi Tsutsumi/Masato Iino, Learning Entrepreneur Lab.
<ファシリテーター:ラーニング・アントレプレナーズ・ラボ/堤孝志、飯野将人>

事業創造実践ワークショップ「Lean Launchpad(LLP)」の第6回(最終回)を7月6日(金)に行ないました.今回はこれまで行ってきたEarly Adopter探しや、収支計画作成の結果などを投資家にプレゼンするという想定で発表を行いました。発表後、各チームの投票によって最優秀賞であるSteve Blank Awardを決定しました。各チームの発表内容と当日の議論の内容を以下にまとめます。どのチームもしっかり準備されたよいプレゼンだったと思います。

<<UMe:海外からの留学生・就労者間での、家具・電化製品の売買を促進するためのデリバリーサービス>>

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タイからの留学生4人で構成されたチームです。全員の、日本にくるタイ人留学生の引越しにおける中古品のやりとりを円滑化したいという原体験からスタートしています。荷物の配達員も日本語しか話せない人が多く、ストレスになっていたようです。
そこで、英語とメッセージのみで配達業者を選んで、運送依頼ができるサービスを考えました。マネタイズとしては、配達業者の配達料のマージンをとります。ここも日本円ではなくて、クレジットカードのみにしているところも配慮しているなと思いました。

ターゲットとしている顧客は大学新入生の留学生、日本についたばかりの海外社会人、日本に住んでいて、出て行く外国人の三つのセグメントで、Facebook広告や、外国人イベントにリーチすることで、この顧客の獲得を狙います。
他の既存の配達業者に比べて、UMEの強みは値段や、外国人向けのサービスであることでした。

当日の議論としては、ユーザーをもう少し具体的に示すこと、お金の取り方の説明で、誰が、誰に払うのかをもう少し、わかりやすくというコメントがありました。既存の配達サービスが英語版をスタートした場合との差別化を強調すると、もっとよかったと思いますが、デザインがうまく、MVPやプレゼン資料も非常に見やすいものでした。言語面はもちろん、テスト期間が重なるなど色々ハンディキャップがあったにも関わらず、頑張って両立した姿勢は素晴らしかったと思います。

<<TUG:フェリーなどの大型船の着港時のタグボートの傭船数を最適化するサービス>>

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ウェザーニュースからのチームです。
安全第一なのはもちろんだが、そのタグボートの艇数が不必要なほどになっているため、気象の観点から何とかしてくれないかと依頼があり、スタートしたサービス案です。船舶停泊のためのタグボート手配を、気象情報や過去の実績を元に、最適な数のタグボート手配を提案することで、船会社のコストを大幅に低減できるというものです。
顧客像は大型フェリー、RORO船、自動車を運ぶ船を扱っている会社。その中で船が大きいことと、運行距離が長いことが外見的特徴として、その外見的特徴から効率よくEAを見つけてきていました。

タグボート一台につき、50万円というコストからタグボートが大きなコスト源になっており、顧客からの満足度として、先方の会社から2~2.5割くらい減らせるのならば十分満足になるとのコメントも頂いていており、過去のタグボートの本数と結果をアーカイブ化することで、安全も無駄も検証でき、アーリーアダプターからも好評で、しっかりと事業化に向けたインタビューをしていました。一隻あたり月15万円で設定、アーリーアダプターからもOKが出ており、非常に現実味のある発表でした。成長性についてはさらに外航船などを狙う予定で、お金を払うのが電力会社などの荷主になるので、新たな顧客にすることを画策しています。

当日の議論としては、ダグボートの値段が運行量に対して安すぎる、着岸の時のサービスならば、外航船ではなく、着岸数にフォーカスした方がいいというコメントがありました。また、結局のところ、船長がタグボートの数を決定するならば彼らにとって実利がないと、減らそうとはしないのではないかと、顧客が誰なのかについてのコメントがありました。

<<Bath Republic: 銭湯おしゃべりタオルという製品による銭湯でコミュニケーション活性化>>

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Bath Republicは、銭湯おしゃべりタオルという銭湯という公共施設でのコミュニケーション活性化ツールを提案しました。銭湯おしゃべりタオルの使い方は来店時、おしゃべりOKな人にはその話題のよって色違いのタオルを渡して、会話を楽しみ、終わったらタオルを返すというものでした。想定する顧客として共通の話題の友達が欲しい人→銭湯で友達が欲しい、でも話しかけられずもじもじしている男性→銭湯によく行くボスになりたい高齢者と変化し、さらに、実際の銭湯で銭湯おしゃべりタオルを実証実験した結果、銭湯好きの若い社会人で、職場と家の往復の繰り返しの疲れを癒やすためにコミュニケーションを銭湯でたくさんしたい人がEAであるとの結論を得ていました。

ターゲットとして想定している銭湯についても、恒常的にできるイベントを探している銭湯→若い顧客を取り込みたい銭湯へとピボットしていきました。最終発表に向けて、8日間毎日、銭湯にかよい、実証実験とインタビューをして、銭湯にもユーザーにも10%のマージンを取ることで内示書を取ってきており、素晴らしい行動力でした。

当日の議論としては、年間売上2000万円の事業に、3000万円投資する人はいないので、計算をし直した方がいい。知り合って仲良くするきっかけのタオルなので、仲良くなってしまった後にも使ってもらえる、キープする方策が必要。タオルは他の競合に真似されやすいので、対策があったほうがいい。話しかけてもいいサインというコンセプトはすごくいいから、銭湯以外の用途も考えスケールシナリオを容易するのが良いといった点があげられていました。

<<LOGI: 天候に応じた最適な物流手段の提案サービス>>

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ウェザーニュース社から参加した二つ目のチームです。
Logiはウェザーニュース社の気象情報を元に、どこよりも早く入手できる航空・鉄道・道路の運行状況情報を組み合わせ、最適な物流ルートの決定をサポートするシステムを企画しており、物流が始まる現地の天候から、運休してしまう交通手段を提案し、最適なルートを提案するものでした。まずは運ぶものが長持ちしない食品運送会社をターゲットにし、徐々に顧客を増やしていくというプランでした。

プロトタイプを作製し、プレゼンで寸劇を行うなど、物流や天気といった投資家には現状がわかりにくい領域を分かりやすく伝えようとしていた発表でした。また物流だけにとどまらず、生産、製造というスタート地点から最適化するプラットフォームにするという非常に大きなビジョンももっていました。

当日の議論としては、講師からの話、金額、スケーラビリティーが正確で素晴らしいというコメントや、GETが顧客への地道な営業と書いてあるので、そこはもう少し戦略的にすべき、人件費の計算も考慮するべき、全体を見た上でスケールする相手をしっかり選んだ方がいいといったコメントもありました。

<<セレンディピティ: AIによるファッションコーディネートレコメンデーションサービス>>

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セレンディピティチームは、ユーザーのファッションの好みを学習して、持っている服の中からその日の好みにあったコーディネートをレコメンドしてくれるAIアプリを提案しました。持っているファッションアイテムを写真で登録して、フォーマル、ラフ、などその日気分を表す単語を入力するとレコメンドを出してくれます。さらにその好みならこんな服を買ってみてはどうかという新しい服のレコメンドも出してくれます。

想定する顧客としては、高校時代制服だった大学一年生の女子。いまいち他のレコメンドアプリをつかっているけど自分の好みあっていないという不満を持っている人、その他、女子大生や外国人留学生などを考えています。マネタイズとしては好みにあるレコメンドすることで、その服のアパレルブランド会社からマージンをもらうことを計画しています。AIということで、東工大の先生も技術協力もとっており、現実味がましていました。このチームは結成当初、東工大学生向け情報提供サービスからスタートしており、そこから大きくピボットした分、ファッションレコメンドサービスに割く時間が短くなっていましたが、最後には、よくまとまった発表に仕上げてきていました。

当日の議論としては世間一般の女子学生ではなくて、もう少し絞った方がいい。年間女子大生が服代に一人いくら使うのかという数値から市場規模を計算すべき。競争戦略はAIを強くすることだけなのか、アパレル企業の方からもう少し行った方がいいのでは。アパレル企業からアーリーアダプターを見つけてきた方がいい。プレゼンとして自分の持っている服からレコメンドがきて、ちゃんとこのレコメンドがいいね!って聴衆に思ってもらえるようにプレゼンした方がいいといったコメントがありました。

<<Cheer: 努力を可視化する若手クリエイター応援サービス>>

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Cheerは取材に行く、売り込みに行くといった若手のクリエイターの見えない努力を可視化するサービスを提案しました。努力が可視化されることで、彼らへの投げ銭による経済的支援を増やすことを狙っています。また若手クリエイター側のEAである武蔵野美術大学の鹿島さんから、当座の金銭的支援だけでなく、アーティストのロールモデルを深く知りたいというニーズと、寄付者側のEAであるイラストレーターの大寺聡さんから、寄付するには話してみて、その若手クリエイターの人となりを知りたいというニーズがあり、それを実現するためにオンライン面談機能を導入しました。

想定する顧客としては、鹿島さんのように地方で個展を開くなど積極的に活動している分、出費の多い美大生や、大寺さんのように、若手の支援には人間性や今、しっかり努力しているかどうかを重視する人としています。マネタイズとしては、投げ銭と面談料のマージンをそれぞれ20%貰うようにしています。これまでは単純にクリエイターと寄付者の投げ銭だけできるサービスだったのですが、どこか寄付者の善意を前提にしたサービスとなっており、クリエイターの小銭稼ぎに使われて終ってしまうのではないかという懸念や、鹿島さん、大寺さんのもっと長い期間での支援を求める声を聞き、このようなサービス案に変更しました。成長性としては投げ銭や面談だけでなく、クリエイターに仕事の受注もできるとようにすることで、その給料のマージンがさらに収入源として見込めることと、美大生だけでなく、アスリートや漫画家など、より実力主義で、ロールモデルが多様でわかりにくい業界に広げることを考えています。

当日の議論として、成長性については寄付を行う側の業界も広げなくてはならないのではないか。まだ寄付者の善意に基づいたサービスになっている印象を受ける。クリエイターの入力の手間が相当高くなったが、それについては了承を得ているのかどうかなどのコメントがありました。

<<まとめ>>


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▶ 参加メンバーの互選の結果、Steve Blank Awardは、我がCheerチームが獲得しました。これまでのグループワークの成果が認められ、本当にうれしかったです。我々のEAである鹿島さんにも当日登壇していただき、美大生のリアルな話をしてくださったことで、説得力が増したのではないかと思います。この場を借りて御礼申し上げます。

▶ 3ヶ月におよぶ事業創造実践ワークショップ「Lean Launchpad(LLP)」もこれにて終了になりますが、非常に学びが多かったです。スタートアップ業界における様々な知識や、いまどのような分析が行われているか、どのようなビジネスモデルがあるのかなど、普段学べないことを学ぶことができました。また、グループワークを通じて、ニーズを掘り下げて、相手がいくら払ってでも使いたいと思わせる価値を提供することが如何に難しいのかを実感しました。しかし、新しい価値を提供すべく、インタビューを行ったり、MVPやPMFを考えたりしていくことは非常に楽しかったです。それは、やはり机上の空論ではなく、インタビューに基づき、実際の顧客候補を前にしているからだったと思います。

▶ また、今回のLLPは新たな試みがありました。(株)ウェーザーニュースから社会人チームが2チーム参加してくれたことです。社会人チームの、顧客ニーズの吸い上げ方や、市場規模の推定根拠は、我々にもとても勉強になりましたし、現実のビジネス現場の雰囲気は社会人チームならではでした。同時に、社会人チームの方々からも、我々学生の発想やフットワークの軽さに刺激を受けたとのコメントをいただきました。今後も、社会人チームが加わってくれることは、お互い大きなメリットがあるのではと思いました。

▶ このような素晴らしい学びを得られたのは、ひとえに講師を務めてくださった堤さん、飯野さんのおかげです。講義の時だけでなく、休日でもミーティングをして頂いたり、的確なアドバイスで導いて頂いたりと、大きな助けとなりました。改めて厚く御礼申し上げます。


(文責:松浦賢太朗 東京工業大学 工学院 電気電子系電気電子コース AGL6期生)